- 慣行栽培とは
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慣行栽培とは、その地域で昔から慣習的に行われている栽培方法・通常行われているごく一般的な栽培方法を意味します。慣行栽培は日本国内で最も多くの生産者が実践している栽培方法です。
この慣行栽培の基準は国がガイドラインをもうけており、慣行栽培における農薬と肥料の使用回数が、各都道府県によってそれぞれの地域や農作物ごとに定められています。
- 農薬とは
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農薬とは、農作物を病気、害虫、雑草などから守り、安定的な収穫量を確保するために用いられる薬のことです。食料自給率が1970年の60%から2020年の37%にまで減少した日本では、農作物の収穫量の維持は喫緊の社会課題でもあります。また、十分な収量を得ることが価格水準の安定にもつながります。さらに、農業従事者が不足している現在、農薬によって農作業負担が軽減されていることも大きな利点になっています。たとえば、除草剤の登場によって、除草作業にかかる時間はかつての50分の1にまで削減されたと言われています。これらのことから、適切な農薬利用が国内の農業全体にとって重要な役割を担っていると考えられるでしょう。
一方で、農薬は少なくとも害虫などに対する毒性を持つため、人のカラダへの影響を心配する消費者のみなさまの声もあり、また、自然環境や生態系への影響も指摘されます。そのため、農薬の使用量・使用方法などについては適切な管理が必要になります。
慣行栽培の項目でもご紹介したように、農薬は使用回数などの明確な規定が自治体によって定められています。農薬は勝手に製造したり使うことはできず、必ず農林水産大臣の登録を受けなければなりません。消費者が安心して農作物を利用できるように毒性や残留性など、様々な項目で試験され、安全性が十分に確認されて審査を通過した農薬だけが登録・販売を許可されています。農薬の製造や販売、使用方法などについては農薬取締法によって定められています。
- 特別栽培とは
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特別栽培とは、通常行われている慣行栽培の基準と比較し、節減対象農薬の使用回数を5割以下、化学肥料の窒素成分を5割以下に削減する栽培方法を指します。節減対象農薬とは、化学合成農薬のうち、有機JAS規格で使用が認められている農薬を除外したものを意味します。つまり農薬の有効成分が化学合成物に由来するものが節減対象農薬であり、有効成分が天然由来の農薬はそれに含まれないということです。農薬や化学肥料を5割以下にするだけで特別栽培を表示することはできません。特別栽培の申請をして、都道府県に承認されてはじめて特別栽培米と名乗ることができます。
農作物の育てやすさの面では、特別栽培は慣行栽培に劣ると言えます。慣行栽培基準よりも農薬を削減するため、実際に稲が病害虫や雑草の被害にあう怖れがあります。化学窒素を与えない分、稲の成長を効率的に促すことが難しくなります。そのため、特別栽培は慣行栽培よりも農作業負担が増え、収穫量は落ちてしまいます。よって特別栽培米の販売価格は高くなる傾向にあります。
もちろん特別栽培には大きな利点もあります。慣行栽培米に比べて、特別栽培米は農薬や化学肥料を削減してつくる分、消費者のみなさまにご安心いただけます。それから、特別栽培は環境負荷の低減にもつながります。加えて、特別栽培米は食味も良いとされています。稲に必要な栄養素『窒素』はタンパク質を構成する要素であり、化学窒素を多く用いれば、お米のタンパク質含量が増えます。タンパク質含量が多すぎるとお米は硬く、粘りが少なく、食味を悪くする傾向があります。お米のデンプンが水を吸って膨らみ、粘り気のあるモチモチの状態になるのを、タンパク質が阻害するためだと考えられています。そのため、慣行栽培基準どおりの化学窒素量を使うよりも、特別栽培のように適度に窒素供給をおさえる方が、食味が良く、日本人好みのお米に育つのです。
- ぼかし肥料とは
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米ぬか・油かす・鶏糞・魚粉などの有機物を、微生物の力で分解・発酵させてつくる肥料のことをぼかし肥料と言います。ぼかし肥料は自然由来の有機肥料であり、化学肥料とは異なります。
ぼかし肥料は化学肥料ほどの即効性はありません。しかし、発酵によって栄養分が徐々に供給されていくため、ゆるやかに長く効く特徴があります。また、化学肥料はその過剰な使用によって土地がやせてしまうリスクもありますが、ぼかし肥料は土の中の微生物の活性を促し、土壌を改良する効果も期待できます。さらに、ぼかし肥料は米ぬか、野菜くず、鶏糞などの廃棄物の再利用につながり、化学合成物に頼らず、環境にやさしい点もメリットに挙げられます。